出張撮影で「あるある!」 子ども写真のクオリティをあげるライティングテクニック

出張撮影で「あるある!」 子ども写真のクオリティをあげるライティングテクニック

04 7月, 2019

執筆者:: Nahoko Ando

子どもの撮影で依頼者の自宅へ赴いたり、特別な記念日にハウススタジオで撮影するとき、依頼者の意向もあって自分の得意なシチュエーションや好みの場所で撮影できないこともあるだろう。そんなときに鍵となるライティングテクニックを、子どもを起用した広告撮影などを行うフォトグラファーの鈴木さや香氏に教えてもらった。

できるだけ少ない灯数と身軽な機材で、どのように状況をカバーし、また子どもがより魅力的に写る世界観をつくり出すのか。鈴木氏好みの作風に仕上げる方法を解説する。

 

1.自然光に頼れない北向きの子ども部屋を明るい空間に

依頼者の家に行って撮影するとき、依頼者の撮りたい壁や空間では、自然光が使いにくいという場面があるだろう。下の写真の部屋は、北側で窓が上方にしかなく、自然光に頼れないシチュエーション。また、すでに設置された手作りの大きな段ボールハウスで遊んでいる様子を撮りたいため、部屋を移動することができない。こういった場面では大きな機材やアクセサリーは持ち運びもしにくく、子どもも驚くので避けたいところだ。

× NG写真

段ボールハウスを背景に、床でお絵かきをしている様子をストロボなしで撮影。子ども部屋の電気は天井からのLED。NGというほどの写真ではないが、電球が暖色系で少し黄味がかっているため、子どもの肌色がきれいに出ず、やや濃く暗く写ってしまう。

〇 OK写真

Profoto A1にディフューザーを付けて下手(しもて)140センチあたりの高さから壁に一度バウンスさせて被写体の背後に照射。髪の毛にハイライトが入り、肌色の黄味も緩和されて、自然な明るい雰囲気になった。

〇 OK写真

Profoto A1にディフューザーを付けて、下手140センチあたりの高さの壁にバウンスして、部屋が全体的に明るくなるように照射。この距離で正面から直射すると人物の影が強く出てしまうため、窓からの自然光を補助するようにストロボを使用している。子どもの移動する場所に合わせてストロボの首の向きを微妙に変えている。

撮影風景。実際はこれくらい暗い部屋だ。今回のように5畳などの小さめの部屋であれば、Profoto A1の1灯で十分光が回る。

 

2.和室で撮影するときの、畳や土壁の黄緑の色かぶりを防ぐ

ひな祭りなど和室で撮影するときに気になるのは、畳や土壁の色かぶり。特に陽射しの強い日は、窓から入る光が畳に反射して、全体的に黄色く色かぶりしてしまう。カメラ側で露出補正して明るくしても、光は黄色いままだし、ホワイトバランスをオートや青色にふると部屋の和の優しい雰囲気が出なくなってしまう。

〇 OK写真

今回はProfoto A1の光を被写体の右後ろにある白い壁にバウンスさせて、部屋全体の自然光によるコントラストを下げ、全体的に黄色い光を緩和させた。柔らかい和室の色味は残したいので、肌色とお雛様の桃色がきれいに見えるくらいの少量の光を拡散させた。

また、部屋が広い場合、1灯ですべての黄色味を払しょくするのは難しいが、そういう場合は被写体の髪の毛にハイライトを入れるのも効果的。髪の毛に白い光が入るだけで、全体の黄色味を緩和し、さわやかな印象にすることができる。

撮影風景。白い壁がない場合、障子もしくは白いシーツにバウンスすることで白い光を差すことができる。

 

3.自然光でそのまま撮影した普通っぽさをグレードアップさせる

特にNGというほどでもないが、特徴もなく、アクセントもない写真に、ちょっとした手間をかけるだけでクオリティはぐっとあがるのだ。

×NG写真

4歳の女の子を民家風スタジオのキッチンで撮影。窓から自然光が入ってくるが、光が上からで弱く硬いため、そのまま撮ってしまうとコントラストのない、まあまあな写真になってしまう。

〇 OK写真

女の子の背景になる部分にProfoto B10にオクタ型のソフトボックスを付け照射。そのこぼれた光が髪の毛や頬にあたり、ハイライトができて明るい雰囲気に。また背後を明るくして撮ることで、小物の瓶や水道の蛇口、水にもハイライトが入り、透明感を出すことができた。主役の人物だけでなく、金属やガラス、水に光が当たることによって、写真の全体の雰囲気をキラキラした印象にしてくれている。

撮影風景。窓は多いが、まあまあな光で意外と暗い。

撮影の前に、イメージをしっかり持つことによって普通っぽいまあまあな写真から抜け出そう。

×NG写真

こちらも4歳の女の子をスタジオの窓辺で撮影。光が多方向から入ってくる場所でもあり、やや逆光なので、そのまま場所に任せて撮ってしまうと、まあまあな写真に。NGというほどではないがこれと言って素敵でもない。

〇 OK写真

髪質も雰囲気も柔らかいイメージを感じさせる子だったので、背後の窓側からProfoto B10にオクタ型のソフトボックスを付け被写体に向けて照射。距離をある程度とったので、拡散した光が程よく回った。背景の小物も明るく飛ばせたので、ボケ感が強く出てよく馴染んだ。イメージ通りの柔らかく完成度の高い写真となった。

撮影風景。光がやや回っているのでなんとなく撮れると思ってしまう場所だが…。

 

4.子どもの日焼けした肌を、明るく、きれいに

子どもは夏に激しく日焼けするため、肌の色味が濃くなり肌色がでにくくなる。七五三や冬用写真の撮影などで肌色をきちんと出したい写真のときに、自然光だけでは限界がある。

撮影場所は、子どもの活動する高さには自然光の乏しいスタジオだった。

× NG写真

ストロボを使わずに撮ると日焼けしていたこともあって、肌がいつも以上に暗く黄ばみが強く写ってしまう。子どもは一度気に入った場所を見つけたら動かないこともあるため、その場で何とかしなければならないときに、ストロボは大変役立つ。

〇 OK写真

自然光はほぼ使わず、Profoto B10を使って部屋全体の光をつくり、Profoto A1でハイライトを入れた。

日焼けした黄色い顔を弱めるために、青色系のホワイトバランスを設定。ただ、それだけだと写真が全体的に青くなってしまうため、被写体の上部からA1の硬めの光で強くハイライトを入れ青の濃淡を作った。ストロボは光の強弱や硬さのバランスを自分でコントロールすることができるので、場所を選ばずに、自分で基調となる光をつくったり、色の濃淡や、きらめくハイライトを生み出したりできる自由さが利点だ。おかげで肌色をきれいに出すことができた。

撮影風景。Profoto B10は下手の上方にあてて壁でバウンスさせ、全体の光をサイド光で作り、Profoto A1は被写体の右上から芯を当てずにすこし強めに照射し、ハイライトにした。

 

5.上からの強い蛍光灯の室内で、大切な着物の色をきれいに出す

外で撮影中に天候が悪くなったり、子どもの機嫌次第で、突然場所を室内に変えて撮影することもあるだろう。下記の写真はロケのあとに急遽、近所のお店に場所をお借りして撮影した姉弟の写真だ。

〇 OK写真

天井の蛍光灯の光は強いけれど、全体的に薄暗さを感じる室内で、そのまま撮ると可愛らしい雰囲気が壊れてしまう。背景を明るくするために障子の奥に小さなスタンドに立てたProfoto A1を斜め上に向けて照射し、逆光をつくり部屋の雰囲気を明るくした。しかし、それだけだと着物の色が浅くなってしまう。この時、女の子が着ていたのは、譲り受けた大切な着物。その色をしっかり出してあげることを優先し、正面からもProfoto A1を1灯照らして、色の再現性を高めた。演色性の高いストロボを使うことが重要だ。さらに、正面からの照射は、蛍光灯の影が顔に強く出てしまうのを抑えられた。

 

6.演色性に乏しい照明の町の美容室で、準備風景の特別な1枚を撮る

七五三などでの着付けは、町の小さな美容室で行うことも多いだろう。そういった場所は少し雑多で背景に物が写り込んでしまう場合もある。うっとりする写真として撮るには難しい環境だが、このような準備風景も撮ってあげると喜ばれるものだ。

〇 OK写真 あえてハレーションを入れてドラマチックに

〇 OK写真 逆光を弱めてしっかり表情を捉える

雑多な環境でも、Profoto A1でハイライトを1灯入れてあげるだけで、光で奥行きや立体感を出して撮影することが可能に。背景を明るくきれいにぼかすことで人物が浮き立つ。更に演色性が高まり肌色も美しい1枚が撮影できた。

特に女の子は、お化粧をしたりかんざしを挿したりする瞬間が、大人っぽい表情になるスイッチ。ストロボの光を入れると表情が浮き立ち、母親がうっとりするような子どもの写真を撮れる。

撮影風景。ストロボの光で強逆光をつくりたかったので被写体の右側から2メートルほど離れた場所にProfoto A1を設置。美容室の道具が置かれたワゴンや、準備の邪魔にならない位置を見つけて撮影を行う。

 

7.バリエーションが欲しい時、日中シンクロで肉眼では見られない世界を撮る

いつもと違う個性的な1枚を撮りたいという要望があれば、日中シンクロも選択肢のひとつだ。この写真は青森の千畳敷海岸で撮影。氷が張った風の強い海の上での撮影のため、機材を倒さないようにスタンドではなくオンカメラで撮影した。f16~22とあえて絞って暗くし、感度を下げてドラマチックに。個性的な年賀状などにも使える2パターンを撮影した。

(左)Profoto A1を使って日中シンクロ。雲の重厚感を出し、絞りをf22と絞って発光している。

(右)日中シンクロなし。肉眼に近く爽やか。絞りはf5.6。

 

様々なライティングテクニックを教えてもらったが、実際の撮影現場ではどのような手順でライティングを決めていくのだろうか。

「まずは、どうしたらこの空間で、その空間らしく撮ったり、表現したい世界観を作りだせるか、ということを考えていきます。自分好みの空間さえ作ってしまえば、なんでも自分らしく撮れるのですが、素晴らしく好みのものだけがあっても空間の光を自分好みにコントロール出来ないと納得いくようには撮れません。まあまあになってしまいます。一度空間を作ってしまえば、その範囲内で誰がどう動いても、自分が納得いく写真が撮れます」と鈴木氏。

具体的には、最初に照明や自然光をどう活かせば自分好みの空間になるかをジャッジする。多灯にしてしまうと、間違えたときに組みなおすのが大変なので、まずは1灯でどれだけの光が作れるかを5分で考えて配置。試しに撮影してOKなら、ハイライトの有無や影として残しておく場所を決めていく。

「一般的にカメラでは意図と関係なく好みの写真が撮れることがありますが、ストロボは意図がないと好みの写真をつくることができません。納得いくものにするためにはある程度明確な、イメージと意図が必要なんです。ストロボは写真のクオリティを上げたり、自分の意図した世界観を作ったりするために、絶対的に必要な道具ですね」

 

フォトグラファー:鈴木さや香

執筆者:: Nahoko Ando

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