John Russoの写真ビジネスは、オリジナル製品の開発から、PR会社の設立、雑誌の創刊、ハリウッドセレブの撮影まで多岐にわたり、そこには彼のパーソナリティがあらわれている。
Johnのセレブリティポートレートは、「GQ」、「Harper's BAZAAR」、「VOGUE」、「Esquire」、「Rolling Stone」の表紙を飾り、そのほかにも映画のメインビジュアルを数多く手がけている。彼は才能豊かで、常にやる気に満ちあふれたフォトグラファーだ。
John、こんにちは! 今日はよろしくお願いします。あなた自身のことや仕事について、お話を聞かせてもらえますか?
Chris、ありがとう! そうだね、僕は写真に対して強い情熱を持っていて、全力で取り組んでいるよ。毎朝オフィスに行くのが楽しみで、まるで仕事をしている感覚がないんだ。優秀なチームと一緒に仕事できるのはラッキーなことだよね。いつも新しいプロジェクトにワクワクしている。僕の仕事は幅広いよ。もともと僕はセレブリティポートレートで知られていたけど、ファッションやホテルキャンペーンなども手がけているからね。僕が作っている雑誌「Gio Journal」は創刊1周年で、いまそのお祝いをしているんだ。だから、毎日やることがいっぱいさ。
幅広い分野の仕事をするのは大変ではないですか? 分野をひとつに絞って活動するフォトグラファーが多いように思います。
これは自分が引き寄せたことだと思っているよ。自分の限界を決める必要はないよね? 僕の名前が売れていない分野の仕事を引き受けることもあるけど、それでもいいんだ。たとえば、「VOGUE MEN」の表紙撮影の直後に、フード撮影をする日もあって、それを不思議に思う人もいるみたいだけど、それは僕が写真を愛しているからさ。情熱があるからこそできるんだ。
それに、いろんな分野の仕事をするのが好きなんだ。僕が有名になるきっかけとなったセレブリティポートレートは、もう完全に自分のものにしたと感じているからね。ワークショップでは、参加者に得意分野を持つように助言するけど、彼らがそれをものにしたら、やりたいようにやればいいんだよ。それは、あなた自身をどう見せたいかということ。ただし、仕事を区別して考えるのが大切だ。たとえば、僕のウェブサイト JohnRussoPhoto.com には、セレブリティポートレートやファッションフォトを、JohnRussoTravel.com には、ホテルキャンペーン、トラベル、ライフスタイル関連の仕事を載せているようにね。
クライアントのホテルは、僕がセレブリティポートレートも得意だと知っている。または、彼らに僕のスキルをプレゼンすることもできる。たとえば、雑誌の10ページ分のファッションフォトを撮影するのに、モデルを モンタージュ・ロスカボス に連れて行く。「VOGUE」の表紙撮影で、Gwyneth Paltrowを マンダリンオリエンタル・ハイドパーク に連れて行く。僕が手がける仕事のうち、異なるもの同士を合わせてみたら、クライアントたちにも喜んでもらえるのさ。僕がやっていることは相乗効果をもたらしていると思うんだ。
まさにおっしゃる通りですね。その柔軟性が、いまのあなたを築いています。このキャリアをスタートするきっかけは何でしたか? この業界で20年近く仕事していますよね?
僕は24歳でカレッジを卒業して、すぐ撮影をはじめたから、およそ25年間、プロのフォトグラファーとして仕事している。ああ、時が経つのは早いね! でも、15歳のときに友だちの写真を撮ってあげたのを覚えているよ。フォトグラファーへの道はそこからはじまったのさ。Bruce Weber、Herb Ritts、Greg Gorman の作品をよく眺めていたな。彼らは当時の僕のヒーローだった。Madonnaの写真集「SEX」が出版されたときも衝撃的だったよ。彼女と Steven Meisel は、自分たちがかっこいいと思うことをやっていて、他人がどう思うかはどうでもよかった。僕も彼らのようなことをやりたいと思い、たまらずマイアミへ会いに行った。彼らは本当に親切で、僕の支えになってくれた。フォトグラファーは皆こうあるべきだと思うんだ。僕は他のフォトグラファーをライバルだと思っていない。むしろ、彼らを支援していることを誇りに思っているよ。
一流のプロフォトグラファーのコミュニティは存在するのですか?
いや、意外にもないんだよ。ロサンゼルスにはハイエンドな仕事をしているフォトグラファーが大勢いるけど、お互いを知らない。だから、彼らに連絡をとって、仲良くしようとしたこともある。パーティーに招待したり、チャリティイベントを開いたりして、コミュニティを作ろうとしたよ。でも、彼らの多くは「自分でもやろうと思えばできるのに、なんで君とやらなければいけないんだ?」というようなことを言ってきた。連絡が途絶えることもあったね。競争の激しい業界だから、わからなくはないよ。でも、正直言って、僕は彼らと直接勝負する気になれない。僕たちは同じレベルの仕事をする。みんな同じように有名雑誌の表紙撮影や新製品の撮影を経験している。そんななかで、クライアントが僕を選んでくれるのはなぜか? それは、僕のパーソナリティと仕事の実績のおかげだと思うよ。僕は自然体のフォトグラファーなんだ。とくにロサンゼルスでは情報が広がりやすい。「ああ! もう彼とは仕事したくない」と編集者たちが噂すれば、すぐに広まるよ。だから、フォトグラファーの人選をするということは、要するに、「私はこのフォトグラファーに5時間、6時間の撮影を任せ、彼らの素晴らしい仕事ぶりを見たい。」と思っているということだ。
それは興味深いです。キャリアをスタートした頃は、ポートレート撮影が中心でしたか? それとも、いまのように幅広く手がけていましたか?
いや、はじめは違ったよ。サウスビーチがトレンドのスポットだったとき、マイアミを拠点に活動していたから。ファッションフォトグラファーを目指していたけど、フォトグラファーが撮影のために、ニューヨーク、ロサンゼルス、ヨーロッパ方面へ飛び回る時代は終わったんだ。当時、僕は1冊目のポートフォリオを作成していた。いまよりもっとラフな感じで、ファッションの要素を取り入れた内容だった。セレブリティポートレートを撮りはじめたのは、拠点をロサンゼルスに移してからだね。Herb Rittsの作品は素晴らしく、刺激を受けていたな。力強い線、シンプルな構図、メリハリのあるイメージ、美しいロケーションのすべてが好きだった。たんに白い背景にセレブリティの顔を写すのではなく、他にも配慮すべき点がたくさんあることを教えてくれたんだ。
仕事のやり方を教えてもらえますか? 仕事の依頼を受けて、まず何を考えますか?
仕事を引き受けたら、すぐプランニングをはじめる。具体的なイメージを想像して、それを実現するためのライティング機材やテクニックのリストを作るんだ。僕には、一緒に仕事をするチームがいる。優秀なチームだよ。そして、プロデューサーやロケハンスタッフなど、撮影を各方面から支えてくれる自分の会社がある。プランニング段階の仕事はひとつだけではないから、同時進行でマネジメントしてくれるスタッフが必要なんだ。ビジネスにおいて、あるレベルの成功を収めるメリットは、こういうことだと思うよ。仕事を選択する自由もある。だから、「ダメだ。この撮影のためにブラジルへ行けない。」、「ごめんなさい。このギャラは時間と労力に見合わない。」などと断れるのさ。でも、これはと思う仕事を引き受けたら、クリエイティブチームと一緒に真剣に取り組むんだ。ときには「ねえ、コンセプトを持っているのはわかるけど、僕の考えもちょっと聞いてほしい。」と意見することもあるよ。それで協力し合えるようになる。彼らは僕のアイデアを求めているんだ。だから、自分の考えをはっきり伝えたい。意見を述べることは、とても大切なのさ。
あなたは裁量を持って仕事していますが、他のフォトグラファーは違うと思います。どのようにこの自由を手に入れたのですか? キャリアの中で「自分は成功したけど、望んでいた場所にいるだろうか?」と自問自答した経験はありますか?
僕は20代の頃にロサンゼルスで仕事をはじめたんだ。当時のクライアントは「People」や世界の小さな出版社だった。僕は自分が望んでいたレベルではなかったけど、安定した質の仕事を納品していたから、ギャラは決して安くなかったよ。30歳になって自分にこう言い聞かせた。「もうこのクライアントたちのために撮影したくない。これは僕のキャリアのターニングポイントだ。」それは、ほぼゼロからのスタートだったけど、ファッション撮影を多く手がけるようになっていった。僕のターゲットは、世界的に有名な「GQ」、「Harper's BAZAAR」、「VOGUE」、「Esquire」で、まもなく彼らが僕を雇ってくれるようになったよ。それからは、もう小さな仕事はしないと決めた。 それは考え方次第なのさ。宇宙に何かを宣言すると、宇宙はそれを受け入れてくれ、その願いが叶うと僕は強く信じている。
このほかにも、ハイレベルな仕事の依頼が入るようになると、仕事が仕事を呼ぶようになる。機運が高まって、仕事が順調に進むんだ。僕が大きなプロジェクトを抱えていて、仕事の選択の自由があるということを、パブリシストやクライアントにアピールできれば、それがさらに自分を高めてくれる。人から助言を求められたら、テストシュートを無償で引き受けるのをやめるように言うと思うな。パブリシストやモデルエージェンシーが、彼らのことをテストシュートを請け負うフォトグラファーと見ている限り、彼らはプロになれないんだ。「私はテストシュートをただで引き受けません。生活のために仕事していて、これは趣味ではありません。」と責任を持って断るべきだ。不運なことに、僕たちの業界ではこの手の仕事が存在する。でも、有償の仕事となると、彼らのようなフォトグラファーは呼ばれないんだ。
同様の話を他のフォトグラファーからも聞きました。彼らは好機をつかもうとするのですが、残念ながら、自分に正直ではないのです。
その通り。自分をPRして機運に乗じるには、自分のビジネスを立ち上げるのもいいと思う。僕は、プロダクション会社、PR会社、雑誌、ビデオグラファーやフォトグラファーのチームを持っている。本来なら外部へ発注する仕事を自分の会社で引き受けているんだ。仕事を受注したら、僕のプロダクション会社が対応する。有名ブランドを担当する僕のPR会社は、新規の仕事を受けるのに一役買っている。PR会社の担当外のブランド撮影をするときは、PRを担当するようにすすめる。その撮影でビデオグラファーが必要だと言われたら、僕のチームに頼めばいい。僕の雑誌は、PRやセルフプロモーションを担っているから、新しいブランドに引き合わせてくれる。すべて自分のもとに戻ってくるのさ。
あなたの仕事のテクニカルな面を聞かせてください。普段の撮影についてざっくり教えてもらえますか?
もちろんさ! この間は、あるブランド撮影で、Jennifer Lopezと仕事したよ。そのときは、まず彼らから僕のスケジュールについての問い合わせが入る。僕のインハウスのエージェントが対応して、「Johnはこの日程なら調整可能です。」といったような流れで進めていく。僕のエージェントがギャラの交渉をして、その後、クリエイティブな話になる。クライアントがこうしたいと提案してきたら、僕の意見を述べる。僕はJenniferをよく知っているから、彼女がどういったライティングを好み、彼女がやりたいことや、やりたくないことをわかっている。だから、おそらく僕はこう提案するだろう。「彼女と一緒に仕事した経験があるから、これとは違ったライティングがいいと思う。僕たちがやるべきことや、コラボレーションの可能性について、僕の考えをまとめたクリエイティブムードボードを作成するよ。」クライアントは、僕が仕事に真摯に向き合っているとわかると、もっと積極的に参加してくれる。ただ現場に現れて、クライアントに言われた通りのことをして、終わりではないんだ。でも、僕は自分の意見を押し付けたくない。なぜなら、彼らからお金をもらっているからね。でも、クリエイティブパーソンとして、自分の仕事に誇りを持っている者として、良いものを作りたいと思うんだ。一部の出版社は、僕が撮ったものをすべて見たいと言ってくるけど、それには応じない。全部を納品したら、僕が良いと思わない写真が表紙や広告に使われるから、選りすぐりのベストショットだけを渡すんだ。
撮影当日のことを教えてもらえますか?
スタジオやロケ地へは、タレントが到着する1時間前に着くようにしている。クリエイティブなアイデアはあるし、ムードボードの準備もしているから、ライティングのセットアップに時間をかけられるんだ。事前のプラン通りに撮影が進むように、僕のアシスタントがライティングの最終調整を行う。それが済んだら、タレントが到着するのを待つ。次の段階は、僕が彼らと一緒に仕事をした経験があるかによって、決まってくる。彼らにムードボードを見せて、現場を見て回る。彼らが好きな音楽があれば、それを流してハッピーになってもらう。衣装を確認する頃には、ヘアーとメイクアップのイメージが決まっている。気になることがあれば、「そのドレスは素敵だけど、この撮影にはベストチョイスではないかもしれないな。でも、バックアップとして撮影するのもいいね。」などとうまく伝えるよ。そして、撮影開始だ! 僕はバリエーションをつけて撮って、彼らの好みを探るんだ。撮影を終えて、彼らの顔を見ればわかるよ。彼らが気に入らなければ、使われない。そして最後に、みんなにギフトバッグを配るんだ。
ギフトバッグですか?
そうさ! 僕はブランドの製品開発をしているから、撮影後も覚えてもらえるように配っているんだ。John Russoの名前が入った60色以上の口紅、マニキュア、香水2種類、キャンドルを作っている。イタリアンレザーのバッグやバックパックもあるよ。些細なことかもしれないけど、セルフプロモーションの一環としてやっている。これも自分のもとに戻ってくるのさ。僕はいつも関係者のみんなに感謝している。彼らのハードワークのおかげで撮影できるのだから、評価されるべきだよね。恐ろしいことに、撮影チームをクズのように扱うフォトグラファーもいると聞くよ。
本当にためになるお話です。この業界の人々は、あなたが言うような理想的な関係ではありません。お互いの関係性が変われば、もっと良い状態になるでしょう。最後に読者の皆さんに一言お願いできますか?
何度も繰り返すようだけど、一生懸命やれば不可能なことはない。雇い主の雑誌が気に入らなければ、自分で作ればいい。もっと表紙や雑誌の見開きをやりたければ、自分で撮ればいいのさ。フォトグラファーにとって、リソースは無限にある。僕がキャリアをスタートした頃とは違ってね。ニュージャージーの郊外にある実家の部屋で、いつかこうしていることを夢見ていた。そして、いまの僕がいる。僕ができるのだから、みんなもできるよ。
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