「和」文化に光を当て、輝かせる腰塚光晃 | Profoto (JP)

「和」文化に光を当て、輝かせる腰塚光晃

31 5月, 2019

執筆者:: Nahoko Ando

「VISION MAKER」という肩書の元、写真家にとどまらず映像制作のプロデュース、和文化を伝える新雑誌の編集長、着物屋、さらに「祭り」のプロデュースまで、幅広く活動する腰塚光晃。枠組みを超えながら常に新しい挑戦をしている腰塚に、現在に至るまでの道のりを訊いた。

雑誌「ぶ ‐江戸 かぶく 現代‐」/現代の千利休と言われる茶道家・松村宗亮氏の特集「かぶく茶の湯」より(メイン写真は「天空」、本写真は「デコトラ」)。

F1レーサーを目指していた頃もあった、という異色の経歴を持つ腰塚光晃。写真家に転向したのは26歳の時だ。その前はいくつかの大手出版社でフリーの編集者の仕事をしていた。

「ファッションや女性がかっこよく写っている雑誌が好きでした。だから学生時代の知り合いに紹介してもらって、編集者になったんです。自分の担当ページを持って、自分で企画を考えて、どういう写真を撮るか考えるのがすごく楽しかった。でも一方で、編集の仕事は向いていないな、ということにすぐ気づきました。机に向かって集中するようなデスクワークが苦痛で仕方なかったんです。割と早い段階で、カメラマンになりたいと思いました」

当時、大手出版社で編集者として働いていた腰塚は、さまざまなカメラマンをキャスティングできる立場にいた。イメージ通りに撮影してほしい時は、柔軟に対応してくれるカメラマンに依頼。どうすればその画が撮れるのか、ライティング技術を学ぶことができた。

さらにタレントの撮影などでは、伊島薫氏など著名な写真家に依頼。技術はもちろん、素晴らしい人間性に触れることができた。カメラマンになりたい人間にとってこんなにいい環境はなく、結局3年間、編集者を続けた。

雑誌「ぶ ‐江戸 かぶく 現代‐」/特集「かぶく茶の湯」より「海水浴」。 コンパクトで持ち運びやすいコードレス式のProfoto B1を使用。両サイドに1灯ずつ設置し、日中シンクロで撮影している。

「ただ、最終的にストロボだけは、実際に触れてみないとわからない。それで編集者を辞めて、スタジオに入ったんです」

1年間限定で働かせてほしいと頼み込み、スタジオに就職。そこでプロフォトの機材を使い始めた。当時は出版業界がいちばん盛り上がっていた時代。雑誌の面白い撮影はたくさんあった。国内外のさまざまなカメラマンのアシスタントに入り、ライティングの技術を磨いていった。

基本的な光の特性を3か月でマスターし、スタッフが帰った後にスタジオで作品撮りをしたり、雑誌やカタログの仕事もし始め、宣言通り1年で独立。光のコントロールに関しては絶対的な自信があった。

「その時点で光オタクというか、光の職人になっていました。自分が見つけた〝いいもの〟にどう光を当てるか考えることが、自分にとって意味のある大事なことであり、自分の表現。それはその時から変わってないですね。広告では、提案できる仕事であれば、とことん実験してやります。どんな光が必要とされているのか、光の処方をするお医者さんみたいなものですね」

プロフォトを選ぶ理由は、機能だけでなく佇まいの魅力もある。

「ストロボ機材って、カメラマン以外は撮影現場じゃないと見ないものでしょう。クライアントがスタジオに来た時に、機材がちゃんとオーラを発していると気持ちいいですよね。それに、コンパクトなところも気に入っています」

最近の仕事はムービーも多い。プロデューサー、演出、撮影や照明も兼任し、自身の作品と言えるような、自由にできる仕事を手掛けている。

Profoto A1を手で持って歩きながらEOS 5D Mark IVをスタビライザーRonin-sに付けて、高感度・高速連写でコマ撮り。「A1は他のクリップオンに比べ、高級感のある光になりますね」(腰塚)

 

レーザーの光を表現するために、太陽が出ていない時間帯に秒20コマで撮影。ストロボは使用せず、自然光で撮影。スチールカメラはムービーカメラより解像度が高く、ディテールまで鮮明に撮影できた。

 

腰塚の活動のキーワードに「和」がある。2014年には元スタイリストの奥様と一緒に東京・中目黒に着物屋「KAPUKI」を立ち上げ、2018年には、クラウドファンディングで出資を募り、新和文化雑誌「ぶ ‐江戸 かぶく 現代‐」を創刊した。「和」と出会ったきっかけは何だったのだろうか。

「もともとハイファッションフォトグラファーになりたかったんです。見たことのない美しく新しい人間像を作るのがハイファッション、それを誰もやっていない方法で写真に収めたいと思っていました。でも、日本でそれを実現できる機会はあまりなくて。ファッション写真が枠にはまってしまっているような気がしていました。海外のエージェントも視野に入れて活動しようとしていた時、たまたま着物撮影のご縁もあって、着物に目が行ったんです」

(上2枚)「型紙シリーズ」。和紙を柿渋で加工した紙に着物の文様を手彫りで丹念に彫り抜いた「伊勢型紙」を複写し、ポジフィルムを作ってモデルにスライド投影して撮影した写真。

「たとえば浮世絵って、新しい女性像を絵師が表現したものだと思うんです。いわば当時のハイファッション。自分がやりたいこともそれだ、と思ったときに、着物でハイファッションを表現しているカメラマンがいないことに気づいたんです」

着物屋を始めたのも、現代のファッションとしてかっこいい着物がないことに気づき、「誰もやってないなら自分がやろう」と思ったからだ。

雑誌「ぶ ‐江戸 かぶく 現代‐」/特集「着物ハイファッション浮世絵現代」より(model:GIMICO)

雑誌「ぶ ‐江戸 かぶく 現代‐」/特集「着物ハイファッション浮世絵現代」より(model:夏木マリ)

雑誌「ぶ ‐江戸 かぶく 現代‐」/特集「着物ハイファッション浮世絵現代」より(model:シシド・カフカ) ソフトライトリフレクター ホワイトを取り付けたProfoto B1、1灯で撮影。ソフトライトリフレクター ホワイトには、グリッドを装着。アシスタントが持ち、モデルの動きや顔の向きなどに合わせて動かしながら、距離と角度を合わせて撮影している。

「もはや、活動は写真に限りません。雑誌をつくったり、祭りをプロデュースしたり、「和」文化の中で新しい表現をやっている人たちに出会い、その人たちに特別な光を当てる。それによって日本をもっと面白くする。そういう動きが今はすごく楽しい。ある意味、それも光を当てるということに繋がっていますね」

雑誌「ぶ ‐江戸 かぶく 現代‐」/特集「切腹ピストルズ 日本江戸化計画」より

雑誌「ぶ ‐江戸 かぶく 現代‐」/特集「切腹ピストルズ 日本江戸化計画」より(「橋の下世界音楽祭」切腹ピストルズのライブ写真)

独立した時、ポートフォリオを見せに行ったある著名なアートディレクターに言われたことで、今も肝に銘じていることがある。

「ブックの中に入っていた1枚が、その時売れていた写真家の写真に似ていると言われたんです。自分が先にやったライティングだったとしても、その時、僕は新人だったので、はたから見ればそれは真似だと思われてしまうと。『100%自分の中から出てきたアウトプットであっても、すでに誰かがやっている表現だったら、それはもうやらない。それだけルールを決めて人がやっていないことをやっていけば、必ずオリジナルはでき上がっていくんじゃないの』。そう言われました」

「人がやっていないことをやる」をモットーにさまざまな活動を行っている腰塚だが、人生の晩年は、現代アートの写真家として作家活動をしたいという気持ちもあるという。でもいまは、いろいろなフィールドを自由に行き来しながら、次に光を当てるものを、探し続けている。

長野県の戸隠村。戸隠神社の杉並木。2019年8月31日(土)、9月1日(日)に開催される「和」のかぶく表現者を終結させる「もののけ祭り」(戸隠スキー場にて開催)のプロデュースも行っている。

雑誌「ぶ ‐江戸 かぶく 現代‐」/特集「NEO舞台 パフォーミングアート」より。「もののけ祭り」に出演する日本舞踏家の花柳凜。「もののけ祭り」では、江戸時代に禁じられた女歌舞伎を復活させるという。

雑誌「ぶ ‐江戸 かぶく 現代‐」/特集「NEO舞台 パフォーミングアート」より。武楽座代表の源光士郎。

 

フォトグラファー:腰塚光晃

執筆者:: Nahoko Ando

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