ポートレートを極めた舞山秀一の原点とポリシー

28 6月, 2018

執筆者:: Nahoko Ando

モデルも女優も俳優もミュージシャンも、被写体のもつパーソナリティをすくい上げて描くような、舞山秀一のポートレート。独立してから32年もの間、時代を彩るさまざまな著名人を撮影してきた。CDジャケットになった自身の作品も数知れない。舞山はどのような道のりを歩んできたのか。その原点から話を聞いた。

独立してから今まで、忙しい合間を縫って、作品制作も精力的に行ってきた。海外に出かけてスナップ撮影を行ったり、モデルを無人島で撮影したり、近年は全国の動物園を巡った作品も発表した。

光と影で描くという写真の根本的な学びを得たのは、高校のデザイン科時代にさかのぼる。

「1年生の時は、色彩や平面の構成方法、視覚や錯覚についてしっかり教えられました。高校2年生からはデッサンもやっていたのですが、その経験がいま役立っています。物を観察し、どう光を見て、どう影を付けていくかということを学びました」。

写真を始めたのも高校時代。写真部では部長を務めていた。当時はドキュメンタリー写真の全盛期。土門拳や木村伊兵衛、ウィリアム・クラインなど、カメラ雑誌によく掲載されていた写真家の写真をよく見ていたが、もうひとり、高校時代に衝撃を受けた写真家がいる。広告写真界の巨匠、操上和美だ。

「“つくられている写真”というものを、いちばん最初に意識したのが操上さんでした。それまでもドキュメンタリーの延長として広告写真を撮影している人はいましたが、操上さんの写真は、ファッションやアート、グラフィックやデザインの延長に見えたのです。すごくかっこいいと」

 雑誌で操上の写真を見てから、セットアップし、ライティングでつくり上げる種類の写真があることを知り、その世界に憧れるようになった。大学では広告を学ぶゼミに入り、卒業後はスタジオエビスに就職した。

「そこで出会ったのがプロフォトのPro-3です。残業は多かったのですが、スタジオライティングについてしっかり教えてもらいました。最初は傘トレのテストとかありましたね…美しさとスピードが評価されるんです」

「ライティングの理論はもちろん、撮影に来るカメラマンにつかせてもらうことで、その場の空気のつくり方や被写体との関係性のつくり方、仕事の流れなども学べました」

半年間スタジオで学んだあとは、2年間、写真家・半沢克夫氏のアシスタントについた。師匠の求める光のイメージを試行錯誤して形にしていくうちに、技術はさらに磨かれていく。独立後はAPAアワードで奨励賞を受賞したりすることで、仕事が増えていった。

音楽専門誌の仕事をするようになると、レコード会社の人たちとも知り合いになり、アーティスト写真やCDジャケットの依頼が多く来た。時代は90年代初期のバンドブーム。それから撮影したCDジャケットは350枚にも上る。

「アーティスト写真は〝お任せ〟も多かったです。広告写真とは違うので、白くとばしたり黒くつぶしても、明確なイメージを持って格好良い写真を作れば良かった。何となく撮るだけなら、その人の“なり“しか撮れない。でも、『この人はこういうライティングでこう撮りたい』というビジョンを考え抜いて現場に行くと、相手もクリエイターだから、楽しんでくれるんです」

レンズに真っ赤なフィルターをかけたり、ライトに色をつけたり、日中シンクロやクロスプロセスなど、さまざまな手法に挑戦した。

一度やったことは二度やりたくない。そんなポリシーをもって撮影に挑み続けていたからこそ、舞山の写真は常に注目されるようになったのではないだろうか。

ストロボを使った撮影は、画をつくるだけでなく、モデルのポテンシャルを引き出す役割も担っているという。ストロボを焚くことで、被写体も「撮られていること」をより意識するようになるのだ。

「ストロボの音は、バシャ!バシャ!って、剛速球を投げ込んでいる感じ。ストロボを焚くと本当に強い写真が撮れる。もちろん、すべての場合に必要なわけではありませんが、撮られる方も光の合図があるから決めやすいかもしれませんね」

ちなみに最近はストロボで撮るとき、大判カメラのシートフィルムで撮るときのように、ファインダーをのぞかず撮るそうだ。ファインダーをのぞいていたら、カメラに写ったその瞬間を見ることはできないが、目で被写体を見ながら撮れば、写った瞬間が確認できるから、OKかどうかすぐわかる。いままで40枚撮っていた写真も、10枚でOKになったという。

20年前、いちばん最初に買ったライティング機材がPro-7sだったという舞山。さまざまな機種を経て、いまはPro-10がお気に入りだ。プロフォトを選び続けている理由は何か。

「何と言ってもプロフォトの光の質を気に入っています。特に、Proヘッドでバウンスしたときに溢れた光が、太陽光に近い。とても自然な光を作ることができるんです」

「さらにPro-10は2.4Wsから2400Wsまでと出力範囲が広いのも助かりますね」

最近は自身の作家性を活かしたオファーが増えている。さらに、秘密裏に計画している作品制作のプロジェクトもあるという。尽きないアイディアが今後どのような作品になるのか、楽しみだ。

写真家:舞山 秀一

執筆者:: Nahoko Ando