Zhang Jingnaの広告撮影に密着 - 依頼から撮影までの流れ | Profoto (JP)

Zhang Jingnaの広告撮影に密着 - 依頼から撮影までの流れ

03 4月, 2014

執筆者:: Zhang Jingna

広告写真の撮影はどのように行われるのか、気になったことはありませんか?今回は、フォトグラファーのZhang Jingnaさんに、依頼から撮影、編集までの一連の流れをご紹介いただきます。

よくいただくご質問のひとつに、コマーシャルフォトの撮影はどのように行われるのかというものがあります。この記事では、私の制作のひとつについて、依頼から撮影後までの手順を少しご紹介します。これから写真を始める方にも、趣味でやっている方にも、制作の舞台裏に光を当てて、楽しんで読んでもらえたらと思います。

その前に、一般的に大手クライアントの場合、キャンペーンに携わる人が大勢いることが普通だということもお伝えしておきます。その場合は、エグゼクティブ・プロデューサーが撮影準備に関わるすべてを担当します。なので、フォトグラファーに求められるのは、トリートメント(詳しくは後述)を行い、会場に来て、撮影するだけであることが多いのです。

しかし、他の多くの仕事では、撮影の本格的な演出をフォトグラファーが自ら見積もり、実行することが最近では主流になってきているようです。この記事では、この規模でのプロジェクトの流れをご紹介します。

 

1. はじまり - 見積もり依頼

クライアントや広告代理店からの見積もり依頼から始まります(この記事では、一貫性を持たせるために、窓口として「代理店」と表記することにします)。一般的なメールには、以下のような内容が記載されています。

  • 撮影日
  • 広告掲載開始日/締切日
  • 画像枚数
  • 使用条件(いつまで、どのメディアで)
  • (広告がどのように見えるかの)視覚的な参考資料/レイアウト
  • 見積もりに入れてほしいもの(撮影料や使用料だけ?それともスタジオ、スタイリスト、ヘアメイク、モデルの料金も?)

ここからは、上記を参考に、自分の予定や都合を確認したうえでチェックリストを作成します。制作に必要だと思われる日数を見積もり、その期間コミットできること、撮影当日に完全に対応できることが重要です。

続いて、撮影チームやベンダーに見積もりを依頼するのですが、通常かかるコストには、以下のようなものが含まれます。

  • スタジオ/設備/ケータリング
  • レタッチ
  • スタイリスト
  • 衣装(通常、スタイリストが見積もりを提出します)
  • ヘアスタイリスト
  • メイクアップアーティスト
  • モデル

もちろん、撮影の規模や複雑さによっては、それ以外のコストもあるかもしれません。ロケハン、ディレクターやプロデューサーのキャスティングなど、必要な小道具や物、人を探すのに協力者が必要な場合もありますが、自分たちだけで達成できる場合もあります。その際、制作に費やした日数分の制作費も(可能であれば)請求しておくことを忘れずに。これらの費用を撮影料金と合算して、代理店からの返事を待ちます。

 

2. 次のステップ – トリートメント

 

これには 2通りのパターンがあります。入札時に要求される場合もあれば、入札後にプリプロダクションの一部として要求される場合もあります(入札で50%請求することを強くお勧めします)。

ご存じない方のために説明すると、「トリートメント」とは、以下のような、撮影にまつわるあらゆる写真的側面を詳細に説明したムードボードのプレゼンテーションです。

  • ライティングとムード
  • 色処理
  • メイクアップとヘアスタイル
  • モデルのポーズ/表情
  • カメラアングル/フレーミング

これらは最終的に、制作前の打ち合わせの際にクライアントに見せるプリプロダクションデッキの一部となり、モデル、衣装、ロケーション、コールシート(香盤表)、レイアウトなどの写真も含まれることになります。

フォトグラファーがこのように撮影の細部まで説明するというのは、やったことのない人にはちょっと変に聞こえるかもしれません。クライアントはすでにビジュアルリファレンスの内容に同意しているのでは?と思うこともありますが、代理店やクライアントが、あなたの理解を確認しなければならない場合もあります。また、フォトグラファーは写真のプロフェッショナルなので、そのドローイングや合成写真が最終的に写真作品としてどのように仕上がるか(完成作品はドローイングや合成写真と全く同じではない)を正確に分かっていることもあるので、トリートメントによって、完成作品を提供する前に、何をするのかを表現することができるのです。

なのでトリートメントは、誤解や期待値のズレを防ぐことができます(ここで、実現しようとすることには必ず言及しますが、よりチャレンジングな要素については「トライする」という言葉を強調します)。結果を100%常にコントロールすることはできません。だから、期待値のマネジメントをするのです。

 

3. キャスティング

 

モデル事務所から見積書が届くと、多くの場合、すでに依頼可能なモデルのパッケージが添付されています。そこから気に入ったモデルを絞り込んで、キャスティングの手配をすることができます。もし、あなたの求めるルックスや雰囲気に合う人がいなければ、遠慮せず他の選択肢をリクエストしてください。

ここで強調しておきたいのは、キャスティングは制作において非常に重要な部分だということです。完璧なモデルと顔(と態度!)を見つけることで、撮影現場での仕事はずっと楽になり、とても効率的に素晴らしい写真を撮影することができます。また、モデルの外見を正確に把握することができ、サプライズも起らないでしょう(衣装が着れなかったら??と想像してみてください)。

 

4. チーム

 

これは比較的簡単なことです。エディトリアル写真やテスト撮影など、一緒に仕事をするのが好きなレギュラーメンバーがすでに何人かいるはずです。その仕事において、クライアントが特定の人物をリクエストしない限り、「より大物な」もしくは「より優秀な」人を捕まえようとする理由はありません。エディトリアルやテスト撮影に協力してくれているチームと良好な関係を築き、お互いの仕事ぶりをよく理解している、自分自身を支えてくれるチームを確保して雇いましょう。

 

5. リスクとバックアップ

カメラの故障、直前のキャンセル、モデルの体調不良、スタジオの使用不可など、ほとんどすべての撮影は、何か問題が起きてしまう可能性があります。常にバックアップ、第2、第3の選択肢を手元に置いて、電話をして対応できる人などを確保しておくようにしましょう。

制作の規模が大きくなればなるほど、考慮すべき外部要因が多くなってきます。天候の問題、場所の制約、移動の困難さなど、単純にコントロールできないことがあることを理解してください。リスクを評価し、広告代理店と懸念点を話し合い、物事が計画通りに進まない場合の対応策を練りましょう。

何が起こっても、落ち着いて、順序よく解決してください。本当に最悪のケースでも、それは教訓となり、将来同じような状況が発生したときに、より良い準備と対処ができるようになります。私たちは皆、どこかから始めて、いくつかの失敗をしなければならないでしょう。そこから何かを学ぶ限り、それは終わりではありません。ポジティブにいきましょう!

 

6. 制作前の打ち合わせ(PPM; Pre-production Meetings)

 

トリートメントのプレゼンテーションを終え、モデルのキャスティングと候補者の選定、自分のコールタイム、スタジオ、ヘアメイクチーム、スタイリストの衣装候補リストを確認します。クリエイティブチームとクライアントとの打ち合わせで、アイデアや撮影スケジュールの詳細を確認します。このミーティングでは、全員が同じ考えを共有していることを確認します。質問や疑問があれば、ここで解決しましょう!

 

7. 機材レンタル&最終チェック

 

すべてが確認できたら、だいたい3つのチェックリストを用意して、チェックを入れていきます。

  • スタッフ:コールシート(香盤表)を受け取った全員が、自分のコールタイムと撮影スケジュールを把握していることを確認(日付が変更されていないことも確認)。
  • ベンダー:配達、場所、など。ケータリング、追加の機材や小道具、時間借りしている場所など、すべての予約を確認。
  • 機材:自分で持っていくもののリストと、使用する機材のレンタルリスト。

二重、三重のチェックが必要なのです!

 

8. プリライト(ライティングのテスト)

すべて決まったら、最後にライティングのテストをします。ライティングやムードのビジュアルは、普段からやっていることであれば、そのニュアンスもよくわかるので、特にやる必要はないかもしれません。個人的には、エディトリアル写真でも個人的な作品撮りでもライティングで遊ぶのが好きなので、キャンペーンのために正確にセットアップしなければならないものがあるときは、いつもスタジオで数時間かけてセットアップをテストしています。撮影の準備は完璧にしておいた方が、気分的にも楽ですからね。

どんな機材を使うかは、ビジュアルに大きく依存します。同じ機材でも、セットアップ、比率、距離、処理を変えるだけで、できることはたくさんあります。私の場合、光の質そのものは、いつも好んで使う数種類のライトシェーピングツールによります。

もしかすると、「このリストはProfotoのブログ記事だからでしょう」と思われているかもしれません(確かにちょっとそうです)。ですが、実は私は8年前に撮影を始めてからずっとプロフォト機材をレンタルしています。いろいろなブランドを試した結果、私はプロフォト製品のデザインと耐久性が一番好きだと気づきました。直感的でセットアップも簡単ですし、忙しい撮影現場で多少酷使されても大丈夫なように、より頑丈に作られているように感じます。しかし、最も重要な要素は、その一貫性と信頼性でしょう。動きのある撮影でストロボが発光しないと、どれだけイライラすることか。エディトリアル写真の撮影で起こるのはまずいことですが、広告撮影だと壊滅的なダメージです。ここは何としてもクオリティを保ちたいところです。

通常は、上記リストのなかからキーライトを選び、適切な背景を見つけ、ライティングのテストをします。何度か調整し、背景を変え、時にはライトを足したり・減らしたりしながら、自分の求めるパーフェクトなセットアップにたどり着きます。そして、ライト・モデル・背景の位置を記録して、撮影時のセットを書き留めます。その後、その場で色処理テストを行い、その設定を撮影用コンピューターに保存します。

やることはたくさんあるように思えますが、私のモットーは「備えあれば憂いなし」です。そうすることで、本番の撮影に自信と安心感が持てますし、セッティングの時間も短縮できます。

 

9. 撮影当日

 

大切な一日です。早めに到着して、コーヒーを飲み、みんなのためにドーナツやお菓子を買いましょう!一日の始まりにおいしいものを食べるのは、みんな大好きです。

自分の仕事をしましょう。自信を持って、準備万端でいるのです。

時々、ヘアやメイクをチェックし、自分とクライアントの希望通りの仕上がりになっているか確認するようにしましょう。ライティングのテストをするのに、遠慮せずモデルに声をかけましょう。ファンデーションや化粧品は、写真に写るモデルの肌や髪色、質感に影響を与えるので、こうした微調整の時間を確保することで、モデルの準備が完全に整ってから撮影に入るまでのダウンタイムを最小限に抑えることができるのです。

それはさておき、アートディレクター・クリエイティブディレクター・スタイリストは、撮影現場では親友だということを忘れないでください。何かトラブルがあっても、お互いに冷静に、丁寧に対応しましょう。どうしても気になることがあれば、個人的に相談して、解決しましょう。緊張や悪い雰囲気は、楽しい雰囲気と同じように伝染します。みんなが不快な思いをして、仕事に支障をきたすようでは困ります。また、アシスタントにタイムチェックをしてもらうことも忘れずに、スケジュール通りに撮影を進めるようにしましょう。

一日の終わりには(あるいは撮影しながら)、アートディレクターがすでに最終候補となる画像を選んでいるかもしれません。一緒に写真を見て、自分のお気に入りに投票してください。チームプロジェクトではありますが、結局は自分の作品なのです。

 

10. ポストプロダクション

 

当然ながら、ここでどれだけの作業が必要になるかは、ビジュアルの複雑さによって変わってきます。レタッチャーに任せておけばいいのです(あなたがレタッチしている場合は、あなたのお仕事です!)。レタッチのマークアップやメモが詳細かつ明確であること、最初の見積もりを超えた修正時間や修正回数に対して請求すること。最終的な画像の納品後は、あとは広告代理店にお任せすることになります。(ここで残りの50%を請求します)。

 

11. 最後に

 

最後のチェックリスト:

  • 代理店から高解像度のアートワークを入手する
  • チームにファイルを送信する
  • チームやベンダーに請求書を要求し、未払い分があれば支払う

キャンペーンが始まったら、広告代理店から高解像度のアートワークを入手するのを忘れないようにしましょう。その広告があまり好きではなく、自分のスタイルで撮影したものでもなく、自分のポートフォリオに入れるわけでもないのに、なぜ必要なのでしょうか? - いつかピッチやプレゼンテーションで必要になる日が来るかもしれません。また、自分の作品をすべてアーカイブしておき、整理しておくことは良い習慣です。私が2年前にO-1ビザ申請をしたとき、コマーシャル・ポートフォリオは申請書の中で最も重要なものの一つでした。

そして、せっかくなので、撮影時のドキュメントもすべてファイリングしておきましょう。私は、キャスティングの詳細、ライティングのセットアップ、チームやベンダーの情報をすべて保存し、整理するのが好きです。いつ連絡先や昔のプロジェクトを参照する必要が出てくるかわからないからです。

最後になりましたが、チームに請求書を出してしてもらい、支払いを行うことを忘れないでください。フリーランスは事務処理を怠りがちなので、放っておくと後で大きな痛手になります。すぐに処理しましょう!

私の撮影の舞台裏から何かのヒントを得て、少しでもお役に立てれば幸いです。また何か質問があれば、コメントをお寄せください!

Zhang Jingna

 

好奇心旺盛な新進気鋭のフォトグラファーのために、Jingnaがヒントとコツをシェアしてくれます。

ウェブサイトFacebookInstagramで彼女の作品を見ることができます。

 

 

 

 

執筆者:: Zhang Jingna