光と影で描く舞山秀一のダンサー撮影 <前編> | Profoto (JP)

光と影で描く舞山秀一のダンサー撮影 <前編>

24 11月, 2021

執筆者:: Nahoko Ando

2021年で独立35周年を迎えた舞山秀一。今回は自身のスタジオで光と影を操りながら空間を演出し、プロのダンサーを撮影した。使用した機材は Nikon Z6 II と Profoto D2。Profoto D2 1000 AirTTL は2年前に2台購入して普段から愛用している。

「コンパクトでロケの仕事にも持ち運びやすいところが気に入ってます。チャージが早くて連射にも強いですし、今回もストレスなく撮影ができました」(舞山、以下同)

Profoto D2

Nikon Z6 II と Profoto Air Remote TTL-N

以前からの知り合いだというプロのダンサーを被写体に選んだのは、立ち居ふるまいや手足を動かす所作が美しいのはもちろんのこと、モデルとはまた違う能力を期待してのことだった。

「私はいつも思い描いた光や背景を作るために事前に綿密な計画を立てて撮影に挑みますが、その場で自由に踊るダンサーの動きまでは描き切れない。完璧に準備したうえで、想定外のことが起こるとみんなでワクワクできるのではないかと思って。彼女のエネルギーと被写体を引っ張り上げる写真家の能力で、写真ならではの、ドキュメンタリーのようなものが生みだせるといいなと思いました」

今回は様々なライトシェーピングツールを試しながら、その効果を活かして撮影を行った。最初に紹介するカットは、白と黒のコントラストが印象的なこちらの写真だ。

被写体だけでなく、影の存在感にも惹かれるこの写真は、Profoto D2 に Pro フレネルスポットを付けて撮影された。Pro フレネルスポットは、Pro ヘッドや D2、B1X、B10X などのライトのヘッドに直接取り付けることができる大型フレネルレンズだ。映画撮影用照明のような光を作り出す効果がある。

「Pro フレネルスポットは、レンズの屈折で柔らかく光を集める印象があります。グリッドを使えばもっと集光できますが、より直進性の強い硬い光になって光量は落ちてしまいます。フレネルはあまり光量を落とさずに、拡散しているやわらかい光をそのまま集光できるのがメリットですね」 

オプションのバーンドアがついたProフレネルスポット

撮影風景

Pro フレネルスポットにつけたバーンドアで調整して光を狭くし、被写体から少し離れた位置から発光。距離がないと、光と影のコントラストが美しく出ない。

こちらは、同じライティングで被写体の横から撮影した写真だ。背景の真っ暗な闇に、衣装のディティールが美しく浮かび上がっている。女性の背後から当てている Pro フレネルスポットの光が壁に反射し、人物を照らしている。

次の写真も同じ Pro フレネルスポットを使用したライティング。光そのものをフラッグで遮って顔の半分に影を作り出した。このまま闇の中に溶け込んでしまいそうな、強くはかない表情に惹かれる1枚だ。

撮影風景

フラッグは被写体により近いほうが、顔にできる影の境目がシャープになるため、ギリギリまでモデルの近くに設置。ライトは遠いほど影がシャープに出る。

次の写真は、まるで舞台上で踊るダンサーにスポットライトが当たっているかのようなカット。Profoto D2 1灯で撮影されている。

「光が回っているところでダンサーが踊るだけでは、ただ踊りを披露しただけの写真にしかならない。でもこうやって、光と影で演出した空間をつくることで、彼女の動きが活かされ、私が作りたい世界観ができあがっていくのです」

このシーンでは、D2 や B1X、B10X などのフラットヘッドのフラッシュに直接装着するグリッド 5° 100mm を使用した。グリッドを使うことで光の拡散をコントロールし、スポットライトのような光を作り出している。

グリッド100㎜(5度)

光の筋の間に少し黒い影ができるのは、ストロボの発光菅が馬蹄形でわっか状になっているから。グリッドは面の光を打消すので、その影響が出る場合があるのだという。

Profoto D2 に グリッド 5° 100mm を装着

「このグリッドは本当に秀逸だと思います。特に5度のグリッドはスポットを的確に絞りこめて素晴らしい。光量は弱くなりますが、奥行きがあるためより集光し、よそに光を逃さない。真っ暗な中にポンと光を出す感じがすごいと思います」

そして、同じライティングで高い位置から撮影したのがこちらの写真だ。

撮影風景

脚立に上り、地面から3mくらいの高さから撮っている。天井は外光が入らないように幕を張り遮光。グリッド 5° 100mm をつけた Profoto D2 を床にバウンスさせて写している。

「この写真は、手を広げただけなのに、鳥みたいに見える。なんかこう、井戸の底にいるような感じにも見えて…。いろんなことを思って写真を撮っていました」

次の写真は、スリットの影と表情が優しく混ざり合う1枚。目元のアクセサリーがアクセントとなっている。Profoto D2 にズームリフレクターグリッド・フィルターホルダースヌートを付けて撮影した。

「自然光でよく撮影する、ブラインドで作られたスリットの影を、ストロボで作れないかと試した写真です。光量を絞れるためピントを浅くして撮影しました。本来なら影はもっとシャープに出るのですが、開放近くにしてあえてアウトフォーカスにしていくことで、自然光なのか、ストロボなのかわからない写りにしています」

撮影風景

Profoto D2 にズームリフレクターとグリッド・フィルターホルダー、スヌートを装着して使用

ストライプの影が明るくならないように、ブラインド以外のところは壁から反射しないように両側を黒で締めている。スヌートをつけた Profoto D2 は、被写体から4メートルほど離れた位置から照射している。

そして屋内スタジオでの最後の写真は、今回唯一2灯で構成した写真だ。人物の輪郭が光で際立つようにかたどられている。

撮影風景

撮影風景

グリッド 100mm を付けた Profoto D2 で、フロントからは顔を狙い、後ろからは被写体の動きに合わせてバックライトを照らしている。手足など体のラインがよりはっきり形作られ、美しく浮かび上がった。

ダンサーの動きやたたずまいを、光と影で演出された空間に浮かびあがらせていく今回の作品。後編では、屋外で撮影した写真を紹介する。


撮影チーム:
フォトグラファー 舞山秀一
モデル 村野みり
スタイリスト 設楽和代
ヘアメイク 橋本孝裕 (SHIMA)
BTS撮影 平舘平

 

執筆者:: Nahoko Ando

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