ストックフォトのアップデートを図る4つのライティングテクニック<後編> | Profoto (JP)

ストックフォトのアップデートを図る4つのライティングテクニック<後編>

17 8月, 2021

執筆者:: Nahoko Ando

約6500万点以上の写真や動画素材を扱うストックフォトサービスの PIXTA と Profoto のコラボ企画として、ストックフォトのビジュアルをアップデートするためのシューティングを実施。前編に引き続き、ストロボを駆使した撮影プロセスを、ディレクションを担当した PIXTA の筑城俊さんと、撮影を担当した PIXTA の矢島聖也さんに伺いました。

コンセプト1・2をご紹介している前編はこちら

コンセプト3:テクニックでメッセージを強くする

Profoto B10 で撮影

学校や受験会場のような場所で机に向かう学生の姿。白いシャツが薄暗い背景に浮かびあがり、真剣に問題を解いているようにも、物思いにふけっているようにもイメージできるこの写真。合成で配置した周りに点在する人物の姿もあり、内面のゆらぎを表しているようです。

「教室に学生がいるシーンのストックフォトでは、情報が並列になっていることが多いんです。今回はメインの人物だけが際立つようなライティングで情報に強弱をつけ、購入者のメッセージをより強く伝える写真をコンセプトとして撮影しました。人物のエモーショナルな部分が際立って感情移入しやすく、イマジネーションが広がる写真の使い方ができるのではと思います」(筑城)

撮影風景

撮影風景

コンセプト3のメインの人物の撮影では、OCF II バーンドアを付けた Profoto B10 を向かって右斜め上から少し角度を付けて設置しました。OCF II バーンドアには OCF II グリッド 20度を付けてより強く被写体に当たるように光を絞っています。

「現状のストックフォトでは、主役を表すときに被写界深度や構図で変化をつけることが多いのですが、今回は人が多くいるシーンの中で、メインだとわかる要素がライティングで作れないかと考えました。着想は、フィリップ=ロルカ・ディコルシアの写真集『Heads』から得ています。硬いライティングで人物を照らし、浮かび上がらせている写真なのですが、スポットライト的な光をメインだけに当てて、他の人物に埋もれないような表現をしてみようと考えました。

スポットのライティングをただ当てるだけだと絵的に面白みがないため、あえて周りにもシャドーがつぶれないくらいの微弱な光を当てています。合成しているメイン以外の人物は、暗く落としてシルエットにすることもできるのですが、あえて肌の質感の生っぽさや制服のエッジを残し、合成したときに、周りの人達が合成っぽく見えないようにディテールを少し出しています」(矢島)

コンセプト4:1枚で時間の流れを感じさせる表現

女子高生がリクルートスーツを着た大人に成長していく様子を1枚で描いた写真。合成ではなく、1発撮りで撮影されています。途中で衣装やヘアメイクのチェンジもしながら作った写真です。

「この写真は1回で多くの枚数を撮影する現状のストックフォトの制作とは相反する手法で、1枚に時間をかける広告クリエイティブのようなアプローチで撮影しました。制作単価を上げてでも解釈の汎用性があるビジュアル(=複数のマーケットにまたがるビジュアル)が撮影できれば、十分に現状のストックフォト制作にも導入できる考え方になり得るのではないかという仮説を持って取り組みました」(筑城)

撮影風景

コンセプト4は、まず始点と終点の位置を決め、その中に残像が何人入るかを計算して人物を配置。向かって左少し手前から、Profoto B10 と OCF ソフトボックス 60x90cmソフトグリットを付けた状態でモデルが動く位置に合わせてライトの位置も変え、光量も調整しながら撮影しています。

撮影風景

「完成した写真の一番左に写っている人物は、強い光量を当てて写しています。シャッターは開いたまま黒いボックスで光をさえぎって、モデルが2番目の位置に移動。中央の位置でモデルのヘアメイクをチェンジしました。衣装がスーツになり、白から黒に変わることで露光量も変わるため、ライトの強さも再度調整して、発光します。トータルで15分くらいシャッターは開いたままの状態でした。

この撮影で特に気を使ったのは、撮影のタイミングです。何か問題があれば最初からやり直しになってしまうので、シャッターの開閉や発光のタイミングは逐一声を掛けて、モデルやスタッフとコミュニケーションを取りながら行いました。撮影前に30~40分ほどテストの時間を取り、被写体のポジションや発光の強弱、また筑城がモデルの表情や動きのディレクションを行い、すべてテストで詰め切った後で、最後の1枚を撮るという形で臨みました」(矢島)

前編・後編と、今までのストックフォトにはないイメージのアップデートを目標に、様々な提案を行った今回の撮影。最後に、これからストックフォトを初めてみたい人達に向けてメッセージを頂きました。

「人と違った撮影テーマで差を付ける方法もあると思いますが、ライティングなどのテクニックでほかの写真との違いを付ける方法もあると、今回の撮影を経て改めて可能性を感じました。ストックフォトはフォトグラファーの活動のオプションかもしれませんが、クライアントがいない状態で自分のアイデンティティや思考をビジュアライズして社会に流通させることができる手段です。その自由度を思いっきり楽しみつつ、しっかりマーケティングと対話しながら取り組めると、普段のクライアントワークとの違いや、楽しみが見つけられると思います」(筑城)

本記事で撮影した写真は、PIXTA の Web サイトにて販売中です。

執筆者:: Nahoko Ando

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