消費者のオンラインシフトから、オンラインショップやソーシャルメディアで商品の魅力を消費者に伝える商品写真の需要が高まる昨今。手軽にハイクオリティな商品写真を撮影するためのライティングの基本的な考え方を、初心者向けにシリーズでお伝えする。
今回は洋服の商品写真撮影のライティングの基本を解説する。
洋服の商品写真の定番は、洋服全体が一目でわかる俯瞰撮影。撮影者の影が商品写真に落ちないように、下に箱を入れて傾斜を作ったスチレンボードの上に洋服を置いて、俯瞰で撮影した。
まずはグレーのセーターを被写体に、メインライトとして、OCF ソフトボックス 60x90cm を取り付けた Profoto B10 1灯で撮影を行った。
長方形型ソフトボックスの対角線を使うことで、服全体に均一な光が当たるようにした。また、サイドから光を当てることで、ニットの凹凸をはっきり描き出した。
さらに、後ろ側にリフレクター ホワイト/ブラック Mの黒い面を入れることで、白シャツの襟のラインを背景から浮き立たせた。
ソフトボックスの高さは、ボードに落ちる影の幅をどのくらいにしたいかによって決める。
ソフトボックスを高い位置に置くと影の幅は小さくなるし、夕陽と同じようにソフトボックスを低い位置に置くと影は長くなっていく。光源を低い位置に置くほど影が強調されてより立体的に描き出すことができるが、ここでは右袖の影が胴体部分にかぶらない程度の高さにソフトボックスを置いた。
下の影を活かした切り抜き写真でも、ニットの立体感がしっかり描き出されていることがわかる。
ライティングはそのままで、クローズアップしたショットも撮影した。
商品の魅力を消費者にわかりやすく伝えるために、色々なアングルや画角での商品写真が求められるので、必ずクローズアップショットも押さえておくとよい。
サイドからソフトボックスでライティングすることで、やわらかい影が落ちてニットの質感がしっかりと描き出されている。
次に服飾小物として、ニット帽とニット靴下、靴の三点セットの撮影を行った。
三点セットのサイド、若干後ろ側にソフトボックスを置くことで、画面の左上から右下に向かって、なだらかなグラデーションのあるやわらかい光を作り出した。
さらに、靴にハイライトを入れるために、右側にリフレクター ホワイト/ブラック Mのホワイト面を置いて、光を起こした。
被写体が白なので、素材感を出すために陰影の表現が特に大切になる。なだらかなグラデーションを生かすことで、陰影はありながらも、やわらかく可愛らしい雰囲気に仕上げた。
最後に、ハンガーに吊るした白シャツの撮影の模様を紹介する。
ここでは白シャツを爽やかな明るい雰囲気で描き出すために、メインライトとしてアンブレラ トランスルーセント Mを取り付けた Profoto B10 をサイド上から照射することで、やわらかい光で白シャツを包み込んだ。
さらに、シャツの右肩に向かって背後から Profoto A10 を逆光で加えることで、右肩にハイライトを入れて、爽やかな雰囲気を演出した。
また、床からの跳ね返った光によって、白シャツに茶色が乗ってくることを軽減するために、リフレクター ホワイト/ブラック Mのホワイト面を白シャツの下に置いた。左袖側にもリフレクター ホワイト/ブラック Lのホワイト面を置くことで、光を起こした。
夏の日を連想させる爽やかな白シャツを描き出すことができた。
最後に、ソフトボックスとアンブレラ トランスルーセントの使い分けのコツについて簡単に触れたい。
長方形型のソフトボックスは、直線的な光で陰影をしっかり出すことができるため、ニットを立体的に描き出すために使った。発光面全体での露出差が小さいので、ハイライトのコントロールがしやすいのも特徴。
一方で、アンブレラ トランスルーセントは、ソフトボックスに比べてより拡散した光で、広範囲にやわらかい光を作りたい時に便利なため、白シャツの撮影で活用した。ハイライトからシャドウへの緩やかなグラデーションを活用したい時にもお勧めだ。
撮影チーム:
フォトグラファー SHUN
スタイリスト 篁 大輔
BTSフォトグラファー 谷川 淳
衣装協力 yohaku