幼少期にヨーロッパを転々として過ごした経験から、山や森など自然豊かな旅先で撮影をするのが好きというフォトグラファーのうちだなおこ氏。Instagramで発信するうちに、作風を買われて撮影依頼が舞い込むようになった経緯もあり、今まではストロボを使って撮影をする機会はあまりなかったという。そこで今回はうちだ氏に、Profoto A1Xを使った古民家での子ども撮影に挑戦してもらった。自然なシチュエーションを好むフォトグラファーにとってProfoto A1Xはどう役立つのか? 撮影の様子をレポートする。
撮影を行うスタジオは、神奈川にある築50年以上の古民家。隠れ家のような平屋で、緑豊かな庭や、近くに竹林の小道がある。
「今回は、夏休みにおばあちゃんちへ遊びに来た子どもをイメージして、撮ってみたいと思います」とうちだ氏。
まず1カット目に選んだ場所は、このスタジオの特長でもある、大きなガラス戸のある廊下。撮影小物として持ってきた紙風船をモデルの女の子に渡し、遊んでいる様子を撮影していく。
にこやかに優しく話しかけながら撮影を行ううちだ氏。
「ガラス戸のにじみや、外のお庭の緑もきれいだったので、この場所を選びました。廊下のツヤ感もいいですね。でも真逆光だったため、そのまま撮ると顔が暗くなってしまいます。あとから画像編集で顔を明るくすることもできますが、そうすると背景が明るく飛んでしまって、せっかくのきれいな緑の色を出すことができません。でもシチュエーションが良いので、なんとか撮りたい、という状況でした」(うちだ)
Profoto A1Xを使わずに撮影した写真
紙風船で遊ぶ楽しそうな子どもの様子を撮っても、逆光で顔が暗く写ってしまうため、表情がよくわからない写真に。そこで被写体から3mほど離れた畳の上にProfoto A1Xを置き、その上にProfoto アンブレラ トランスルーセント Mをかぶせてバウンスさせた。
トランスミッターProfoto Connectをソニーα9に取り付けて撮影
Profoto Connectは、操作ボタンもメニューもなく、設定モードはオート、マニュアル、電源オフの3種類のみ。オートモードに設定すると、TTL自動調光機能となり、カメラのシャッターを切るだけで、自動的に適正露出が得られる。マニュアルモードに設定すれば、光量を自由に調整することも可能。ひねって操作するだけなのでとても簡単だ。
「撮りたい絵が思い浮かぶと、夢中になってシャッターを切ってしまう」といううちだ氏だが、Profoto A1Xはリサイクルチャージが速いため、シャッターチャンスを逃さずに撮れる
Profoto アンブレラトランスルーセント Mは、広げてポンと床に置くだけでも使える
発光が強すぎると不自然に見えてしまうので、あたかもガラス戸から射し込む光が廊下に反射して、顔が明るく見えているようなニュアンスにとどめることを意識した。アンブレラを使用したのは、子どもがどこへ動いても大丈夫なように、広範囲に光を拡散させるため。ストロボを直接被写体に照射するとギラっと強い光になってしまうが、アンブレラで拡散すれば、柔らかい光を空間になじませることができる。
Profoto A1Xを使用して撮影した写真
Profoto A1Xで光を作ったことで、子どもの顔が明るくなり、外の緑の色もきちんと出て、場の雰囲気が伝わる写真になった。窓から射し込む光が廊下に反射して黄色くなった光も、Profoto A1Xの白いストロボ光と混ざり合うことでちょうどよい色になり、子どもの肌色も健康的だ。
2カット目は、廊下の奥にある障子の敷居で撮影することに。まずはProfoto A1Xを使わずに、自然光のみで撮影してみた。「廊下や障子の直線がきれいだなと思って、この場所を選びました」とうちだ氏が言うように、平面のラインが美しい1枚だ。
Profoto A1Xを使わずに撮影した写真
光と影のコントラストが美しく、和室ならではのしっとりとした雰囲気も出ているが、逆光のため、やはり顔や体は真っ暗になってしまう。この写真もいいが、子どもをメインとした撮影と考えると、もう少し顔を明るく写したい。
初めに試みたのは、被写体向かって左側に、Profoto A1Xをスタンドに立てて設置し、アンブレラにバウンスさせる方法。広く光がいきわたり明るくなったが、全面ガラス戸の建物のため、Profoto A1Xがガラスに映り込んでしまった。結局、次に試した寄りのカットを採用することに。ソフトバウンスをつけたProfoto A1Xを手持ちで60㎝ほどの距離から照射した。
被写体がまぶしくない位置や、顔に落ちる影を確認しながら、光を照射する角度を調整していく
手持ちの場合、子どもがどこに動いてもストロボの位置を合わせられるため、手軽に試せるという利点がある。
Profoto A1Xを使用して撮影した写真
寄りで撮影することによって、子どもの柔らかい髪質や髪の毛のハイライトもきれいに表現することができた。背景の緑もしっかり残って、木漏れ日もきれいだ。顔に落ちる影をもう少しやわらげたい場合は、シャッタースピードを遅くする方法もあるが、その場合背景も一緒に明るくなってしまい、色が飛んでしまう。被写体向かって右手前などに、レフ板や白いシーツなどを広げて、Profoto A1Xの光を起こすなど、雰囲気や好みで調整してもいいだろう。
3カット目は衣装をチェンジし、夕暮れ時、縁側に座って風車で遊ぶ子どもを撮影する。
「陽が出たり、隠れたりしていて、タイミングを見ながら撮影していたのですが、陽が隠れた瞬間は余計に暗く感じましたね」とうちだ氏。
Profoto A1Xを使わずに撮影した写真
女の子の靴のあたりまでは、夕陽の光が届く瞬間もあるが、顔までは届かない。すこし深く腰掛けたり、後ろに傾いてしまったりすると完全に影のエリアに入ってしまう。そこで今回は、顔の表情を明るく見せるために、射し込む夕陽の延長線上の位置にスタンドに立てたProfoto A1Xを置いて、夕陽のような光を演出してみることにした。
被写体向かって左側にスタンドに付けたProfoto A1Xを設置
植栽越しにProfoto A1Xを照射させ、光に若干ムラを作ることで、より自然な光を作ることができる
Profoto A1Xを使用して撮影した写真
Profoto A1Xを使うことで、夕方の暖かみのある光に包まれた縁側を違和感なく表現することができた。ガラス戸を大きく開けて奥の緑を広く見せることで、緑あふれた環境にあることも伝えられる。陽が出る瞬間に合わせてシャッターを切り、Profoto A1Xで作った光と合わせることで、ベストなシーンを撮影することに成功した。
そしてラストカットは台所のシーン。すりガラスの窓はあるが、陽も暮れ始めてとても暗い。さらにシルバーの大きな冷蔵庫やキッチン用具などもあり、少しごちゃごちゃした印象だ。
「おばあちゃんちの台所で、椅子に座って梨をつまみ食いをしているような、ちょっといたずらしているような雰囲気を撮りたかったんです。女の子のあどけない表情を見せたかったのですが、とにかく暗かったです」(うちだ)
Profoto A1Xを使わずに撮影した写真
このシーンで挑戦したのは、被写体向かって左側すぐそばに、あたかも大きな窓があって西日が射し込んでいるような空間を作る方法。Profoto A1Xにバックパネルを装着したアンブレラ ディープ トランスルーセントMを付け、スタンドを立てた。バックパネルを付けることで光が後ろから漏れず、しっかり前へ届けることができる。
アンブレラ ディープ トランスルーセントMを使うことで、西日が射し込むかのような窓を再現することができた
Profoto A1Xを使用して撮影した写真
写真に写る台所の窓はすりガラスだったため、画面になじむよう、Profoto A1Xで作る光は強い光ではなく、なるべく柔らかい光になるように調整。カラーフィルタージェルキットのフィルターを装着し、アンバーな暖かみのある光をProfoto A1Xで作り出すことで、古民家に西日が射し込む、というシチュエーションになじむ色が演出できた。フィルターは磁石で簡単に装着できる。
以上で本日の撮影は終了。うちだ氏は今回じっくりとストロボを使ってみて、どう感じたのだろうか?
「もともと、ストロボは少し光を足すためのもの、というイメージだったので、こんなにいろんなシーンが撮れるとは思いませんでした。夕陽のようなドラマチックな光をつくったり、まるで大きな窓があるかのような光をつくったり。すごく楽しかったです。窓辺で撮るのが好きなので、まずは逆光のシーンで人物の顔をきれいに写すところから取り入れてみて、徐々に作り込んだ写真も撮れるようになりたいですね」
ナチュラルな撮影スタイルのフォトグラファーにとっても、その日の天候や初めて訪れる場所の光をうまくコントロールしたり、思い通りの表現を実現するために、Profoto A1Xは役立ちそうだ。
今回の撮影で使った機材
撮影チーム:
フォトグラファー:うちだ なおこ
モデル:小林 かんな
ヘアメイク:手塚 裕美
スタイリスト:谷川 夢佳
ライティングアドバイザー:谷川 淳
BTS フォトグラファー:平舘 平
Profoto A1X の製品情報はこちらをご覧ください。