ライティングで変わる。子ども写真のバリエーション | Profoto (JP)

ライティングで変わる。子ども写真のバリエーション

24 4月, 2019

執筆者:: Nahoko Ando

広告写真でポートレート撮影を数多く手掛ける鈴木さや香氏。中でも特に依頼が多いのは、長年続けている子どもの撮影だ。今回は2歳と10歳の女の子を、鈴木氏が愛用しているA1とB10を使ってシューティング。ストロボやアクセサリーの組み合わせによって変わる子ども写真の撮り方とコツを教えてもらった。

「お化粧をしない小さな子どもは、いかに素肌の質感と透明感を出せるかというところがポイントです」と鈴木氏。できるだけ少ない灯数と身軽な機材でどれだけバリエーションを出せるのか。鈴木氏による8枚の写真を紹介しよう。

 

1.B10を1灯。動いても困らない、簡単移動のライティング

使用機材:B10、アンブレラ ホワイト M、ディフューザー

2歳くらいの小さな子どもは好奇心旺盛でじっとしていられない。そんな時、大掛かりなライティングを組んでしまうと、動いた場所へすべての機材を移動させることになり、とても大変だ。しかし1灯だけなら、動いた場所にポンと移動させるだけですぐに撮影が可能に。迷ったら、まずは1灯でのライティングがおすすめ。なるべく光源が大きくなるよう、ソフトボックスではなく、アンブレラとディフューザーを使用。アンブレラの向きを変えるだけで、立っても座っても周辺がきれいな光になるようにセッティングした。

 

2.A1を1灯。やや陰影をつけ柔らかな産毛をきれいに表現する

使用機材:A1、ソフトバウンス

ストロボをオンカメラにして直接当ててしまうと、子どもには平面的で硬すぎるイメージになってしまう。肌の透明感や柔らかい産毛をきれいに表現するために、オフカメラにしてソフトバウンスを付けたA1をカメラ位置から見て被写体の左後ろに1灯設置。手前が暗く落ちてしまうため、右側のカポックで光を起こした。ソフトバウンスは小さいがなめらかな影を作ることができる。マグネットの装着も簡単で折り畳み式のため、持ち運びもしやすく便利。

 

3.B10を1灯。影を落とさず柔らかい光の本格的な1枚に

使用機材:B10、アンブレラ ホワイト M、ディフューザー

素肌の透明感を際立たせるために、被写体の左側からアンブレラとディフューザーを付けたB10を照射。広範囲で拡散した光を逆側からカポックで反射させて被写体の右側の影を起こした。被写体が一人なら、カポックや白壁などの近くに立ってもらい、アンブレラはやや離した位置に置く。光は被写体に近づければ近づけるほど柔らかくなるが、そのかわりコントラストが強くなってしまうため、距離感を調整しながらセッティングすることが重要だ。

 

4.A1を1灯、B10を1灯。影とハイライトで少女の大人っぽさを引き出す

使用機材:A1、A1用グリッド20度、B10、OCF ソフトボックスOcta 60㎝

ソフトボックスを被写体の左手前に、グリッドを付けたA1を右後ろに設置した。ソフトボックスはアンブレラに比べて光が回る範囲は狭いので、陰影をつけたいときや、背景を暗く落としたいときに最適。髪の毛のハイライトをきれいに出すために、20度のグリッドを装着したA1を左後ろから照射した。髪の毛が多くて重くなりがちでもハイライトを出すと軽さが出る。このソフトボックスは丸いキャッチライトを目に入れることができるので、芯の強いしっかりとした表情を作ることができるのも良い点だ。

 

5.B10を2灯、両側の背後から当て、強逆光の神秘的な表現に

使用機材:B10 2灯、アンブレラ ホワイト M(ディフューザー付)2個

被写体の背後左右に1灯ずつ、B10を設置。スタジオにあった白いテーブルを被写体の前に置くことでレフ板替わりになっている。両側から光を当てることで、顔がスマートな印象に。このような光を使ったライティングならではの表現は、未来的、神秘的なイメージの撮影や、女性らしい優しい雰囲気の表現に使いやすい。また顔正面は直接光が照射されないのでしっとりと落ち着き、逆光の効果でボリュームの多い髪も柔らかく明るい色味に表現できる。

 

6.A1を2灯だけ使用して、本格的な柔らかい光を作る

使用機材:A1 2灯、リフレクター トランスルーセント L、A1用グリッド20度

A1を左手前に1灯、右後ろに1灯設置。手前のA1はリフレクター トランスルーセントを通すことで柔らかい光を作ることができる。紗幕よりはやや硬い光になるが、紗幕がない人はリフレクターが便利。リフレクターはコンパクトに折りたたんで持ち運びでき、スタンドなどにクリップ1つで設置できるため紗幕の設置に比べて簡単だ。背景をグレーにするために、後ろのA1にはグリッドを付けている。B10を持っていない人でも、A1、2灯だけでここまで光を回すことができる。

 

 

7.A1とB10、紗幕を使い、動いても困らないライティング

使用機材:A1、B10、紗幕

紗幕を通したB10をメインライトにすることで、光が広く拡散され、子どもが動いても困らないライティングに。背景紙に向けてA1を当てることで、背景を白く飛ばし明るいグラデーションに仕上げた。「アクセサリーも使わずB10 1灯とA1 1灯というコンパクトな機材でここまで光を回した撮影ができるのは嬉しい驚きです」と鈴木氏。

 

 

8.B10と紗幕を使って、マットな今っぽい光に

使用機材:B10、紗幕、アンブレラ ホワイト M、ディフューザー

アンブレラにディフューザーを付けたB10をメインに紗幕を通して撮影。影をなくしてマット感が際立った仕上がりに。子供が動いても影が出ないため、近づいたり、離れたり、おおよそどの場所でも同じような状況で撮影ができて安心。簡易スタジオなどで広告写真のようなクオリティの高い写真が撮りたい場合は、このライティングがおすすめ。紗幕は意外に簡単にセッティングできて、広い範囲で均一な光を作ることができるので、子ども撮影が多い場合は持っていると役立つだろう。

子ども撮影において一番大切なのはコミュニケーション。そして、スピード感が重要と鈴木氏は話す。

「2歳など小さな子どもが撮影に集中できるのは長くても10分程度。その10分にクライアントの要望のものをどれだけ撮れるかが重要です。なるべく早めに終わらせて彼女たちを解放してあげたい。そのためには、機材を徹底的に自分のものにしておかないといけないし、演色性に優れた操作性のいいストロボを使って、スピーディーに撮影することが大切。それが子どもに対する礼儀だと思っています。

A1やB10はコードレスなので、自宅に伺って撮影する際にもコンセントをお借りする心配もなく、子どもが足を引っかけてしまう心配もない。

また大きく威圧感のある機材だと光はきれいに作れても、子どもが緊張してしまうことがあります。今回の2つの機種はボディ、アクセサリー共にコンパクトで威圧感を感じにくい。お子さんがお母さんの顔も見失わないですみます。

できるだけ普段の生活とそんなに変わらない状況で、撮ってあげたいと思っています」。

 

フォトグラファー:鈴木さや香

執筆者:: Nahoko Ando

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