光あるところに影がある | Profoto (JP)

光あるところに影がある

13 5月, 2020

執筆者:: SHUN

人は光があるからこそ、そこにある物や人の形、色を知ることができます。もちろん、写真を撮る上でも光が無ければ、写すことも出来ません。つまり、写真に必要不可欠なものが光です。そんな光が物に当たると、必ず暗部、すなわち陰影が生まれます。光と陰影は切っても切れない言わば一心同体なモノであり、陰影を知ることで光についても知ることが出来ます。今回はそんな陰影に注目してみたいと思います。

陰と影

まず、陰(Shade)と影(Shadow)の違いを理解することから始めましょう。

陰(Shade)は、隠れていて光が当たらない物体上の場所を指します。影(Shadow)は、光が物体に遮られて地面などに生まれる暗い部分を指します。

この林檎の写真では、左側から光があたり、林檎自身の右半分は光が当たらない場所となり、そこが陰(Shade)であり、林檎に光が当たり光を遮ることで、木の板に生まれる暗い部分が影(Shadow)となります。

陰(Shade)は物体そのものの形や表面の性質に依存することが多く、コントロールが難しい物であり、今回は光を物体が遮ることによって生まれる影(Shadow)についてお話しします。

さらに影には二種類の影があり、それぞれを使い分けることによって多彩な表現が可能となります。まずこの二種類の影「本影と半影」に着目してみます。

本影と半影

大きさを持つ光源から出た光が物体を照らした際にできた影のうち、本影とは光が全く届かないところにできる濃い影のことを指し、半影とは光が部分的に到達する薄暗くグレデーションになっている部分のことを指します。この半影のグラデーションは光の遮り方次第で急にも緩やかにもすることができます。

上の写真で見てもわかる通り、林檎に近い半影の領域が小さい場所はグラデーションがきつくなっていて、カメラに近い半影の領域が大きくなる場所はグラデーションが緩やかになっていいます。つまり、この半影の領域の広さを調整することによって、様々な影を作り出すことができるのです。

遮蔽物による半影のコントロール


半影の領域を狭くした影

光源と遮る物(今回は黒の画用紙を使用)の間の距離を大きくとることで、半影の領域が狭い硬い影を作り出すことができます。

半影の領域を広げた影

光源と遮る物の間の距離を近づけることで半影の領域の広い柔らかい影を作り出すことができます。

商品撮影への応用1


実際にこの影の性質を使って商品撮影を行ってみます。

1. Profoto A1X なしで自然光のみで撮影

2. 左奥から Profoto A1X を直当て

上の写真は、自然光の方向性に合わせて被写体の左奥から Profoto A1X を発光しています。写真を見る時に、人の目は明るい部分に目を引かれる傾向があります。そのため、Profoto A1X のみでは被写体の手前と奥両方が明るく、見せたい部分が散漫になってしまいます。そこで、次に、黒の画用紙で影を入れることによって、より目線が被写体に行くようにしました。

3. 左奥から Profoto A1X を当て、黒画用紙二枚で影を入れたもの

撮影風景

また、Profoto A1X と二枚の黒画用紙の間の距離を調整することによって、手前の影は半影の領域を狭い硬い影を、奥側は半影の領域を広げたやわらかい影を作り出しました。このように、硬い影とやわらかい影を混在させることにより、自然光らしさを演出することができます。

光源の大きさによる半影のコントロール


ここまで、光源と遮る物(上の例では黒画用紙)の距離によって半影の領域の幅をコントロールする方法をお伝えしましたが、光源の大きさを変えることによっても半影の領域の幅をコントロールすることもできます。

光源と遮る物の間の距離は変えずに、光源の大きさのみを大きくすると、半影の領域は広くやわらかい影になります。

小さい光源の場合

大きい光源の場合

商品撮影への応用2


光源の面積を大きくしたやわらかい光使った撮影例をご紹介します。

左からの Profoto A1X を白のコピー用紙でディフューズし、光源を大きくしました。被写体の蝶ネクタイにやわらかい光が当たっています。

ここに黒の画用紙二枚を追加し、被写体の手前側と奥側に影を作り出しました。元々の光源が大きくやわらかい光のため、前方の黒画用紙を光源から離しても半影の領域が広くやわらかい影になっています。

木漏れ日の再現


次に、日中に自然光の木漏れ日の中で撮影したような写真を撮ってみます。そのために用意するものがたくさんの小さな穴が開いた黒い紙。Profoto A1X の光をこの黒い紙で遮り、穴の開いた部分に光が当たり、複数のランダムな穴の半影が重なり合うことで、硬い光とやわらかい光がランダムに交差した、木漏れ日のような光を作り出すことができます。Profoto A1X と黒い紙との距離を調整することによって半影の重なり具合を調整し、自分の好きな雰囲気を作り出すことができます。

1. 自然光のみで撮影

2. Profoto A1X 直当てで撮影

3. Profoto A1Xに加えて、穴の空いた黒い紙を使用

撮影風景

人物撮影への応用


ここまでテーブルフォトの撮影例をご紹介しましたが、もちろん、人物撮影への応用も可能です。人物撮影で影のグラデーションを活用した例をご紹介します。

下の写真は、被写体に向かってやや右側のトップから Profoto A1X を発光しています。被写体の顔に目線が行くように、胸に当たる光を下部に加えた黒ボードでカットしました。また、髪の毛にも明るい部分と暗い部分の少しの差をつけて立体感を出すために、上側にも黒ボードを加えてやわらかい影を髪の毛の部分に加えました。

次の写真は、トップやや前方から Profoto A1X を発光しています。顔部分にスリット上のハイライトを入れるために、Profoto A1X を画角に入るか入らないかのところに設置し、発光面近くを黒ボード二枚で挟むようにカットし、やわらかい影で出来たハイライトを被写体に加えました。

こちらは前の写真と同様のセットアップで、Profoto A1X にソフトバウンスを装着した状態で、黒ボード二枚でスリット状の光を作り出し、被写体に当てました。ソフトバウンスをつけたことで光源が大きくなっているため、影のグラデーションがよりなだらかになっています。

これら三枚の人物写真全て、被写体の下からレフ版の代わりに、OCF ソフトボックス 60x90cm をつけた Profoto B10 を入れることで、全体のトーンを整えています。

まとめ

今回は影に着目してみましたが、いかがでしたでしょうか。ここでご紹介したライティングは、お手持ちのストロボ 1灯とりんご、画用紙など家にある身近なものを使って簡単に再現できますので、ぜひ色々と実験して遊んでみてください。

光あるところに影がある。影の性質を理解し、思い通りに影をコントロールできるようになることで、より繊細に深く光を使いこなすことが可能になります。光が作り出す影を見ることによって、光の本質への理解が深まるはずです。


制作チーム:

撮影・記事執筆:SHUN
スタイリング:本間 ひとみ

執筆者:: SHUN