限られた撮影時間と場所で臨機応変に対応することが求められるレストラン出張撮影。手軽にハイクオリティな料理写真を撮影するためのライティングのコツをシリーズで解説する。
今回は、メインの肉料理「骨付きラムのグリル野菜添え」の撮影の模様をレポート。
ライティングによって生まれる描写の違いを明らかにするために、4パターンのライティングで撮り下ろした。
ライティングA:バウンス光
メインライトとしてレフ板にバウンスした Profoto B10 を右サイド高めの位置から照射。2灯目として、レフ板にバウンスした Profoto A10 を右サイド半逆光の位置から照射。3灯目として、Clicグリッド10度を取り付けた Profoto A10 を左後ろ側から照射。
まずは、バウンス光を使って空間全体に光を回して、ふんわりとしたやわらかい雰囲気でラム肉を描き出したライティングパターンAをご紹介。
メインライトとして、Profoto B10 をレフ板にバウンスさせて、お皿の右サイド高めの位置から照射した。
高さのある料理なので、逆光気味からメインライトを入れると肉の正面側に影が落ちてしまうため、サイドから照射した。また、長い影がお皿に落ちないように、高めの位置から照射した。
メインライトとしてレフ板にバウンスした Profoto B10 を右サイド高めの位置から照射。
ここに Profoto A10 をレフ板にバウンスさせて、半逆光の位置から加えることで、背景からラム肉を浮き上がらせた。骨が白く描き出され、お肉のハイライトもより強調された。
メインライトとしてレフ板にバウンスした Profoto B10 を右サイド高めの位置から照射。さらに、レフ板にバウンスした Profoto A10 を右サイド半逆光の位置から照射。
さらに、Clic グリッド10度を取り付けた Profoto A10 を左後ろ側から照射することで、後ろ側のお肉に照りを加えた。
3灯ライティングで仕上がった写真が下のもの。パリッとしたラム肉と、芽キャベツや空豆の緑が人目を引く、春を感じさせる一品を美しく描き出した。
メインライトとしてレフ板にバウンスした Profoto B10 を右サイド高めの位置から照射。2灯目として、レフ板にバウンスした Profoto A10 を右サイド半逆光の位置から照射。3灯目として、Clicグリッド10度を取り付けた Profoto A10 を左後ろ側から照射。
スタイリングのポイントとしては、ワイングラスの足を後ろに入れてきらっとさせて空気感を出した。
ライティングB:スポット光
メインライトとして、Clic カラーフィルター クオーター CTO と Clic グリッド10度を取り付けた Profoto A10 を右サイドから照射。さらに Clic フィルター クオーター CTO と Clic グリッド10度を取り付けたもう1灯の Profoto A10 を、左サイド半逆光の位置から照射。
次に、大人隠れ家レストランをテーマに、背景を落としてスポット光で料理を浮き上がらせて撮影したライティングパターンBを紹介する。
まず、メインライトとして、Clic カラーフィルター クオーター CTO と Clic グリッド10度を取り付けた Profoto A10 を右サイドから、ラム肉の右側面に向けて照射した。
間接照明が美しい夜の隠れ家レストランをイメージして、あえて低い位置からスポット光を照射することで、長い影をお皿に落とした。
メインライトとして、Clic カラーフィルター クオーター CTO と Clic グリッド10度を取り付けた Profoto A10 を右サイドから照射。
ここでは、Clic カラーフィルター クオーター CTO をつけることで、夜のレストランの温かみのある光を再現した。Clic シリーズのグリッドやフィルターは、マグネットでワンタッチで重ね付けできるので便利。
さらに、Clic カラーフィルター クオーター CTO と Clic グリッド10度を取り付けたもう1灯の Profoto A10 を、左サイド半逆光の位置から加えた。後ろ側のラム肉をきらっとさせ、メインライトが作る長い影を和らげた。
メインライトとして、Clic カラーフィルター クオーター CTO と Clic グリッド10度を取り付けた Profoto A10 を右サイドから照射。さらに Clic フィルター クオーター CTO と Clic グリッド10度を取り付けたもう1灯の Profoto A10 を、左サイド半逆光の位置から照射。
赤ワインを片手に楽しむ夜の隠れ家レストランの一皿、ラム肉をカリッとした質感でムーディーに描き出した。
ライティングC:夏の太陽光
アクセサリーなしの Profoto B10 を半逆光の高い位置から直接照射。
次に、バーベキューレストランをテーマに、夏の晴れた日の直射日光でラム肉をワイルドに描き出したライティングパターンCを紹介する。
晴れた夏の日の昼間の直射日光を再現するために、アクセサリーなしの Profoto B10 を高い位置から直接照射した。ラム肉の表面にハイライトを入れるために半逆光の位置にライトを置いた。
ライトを高い位置に置いたため、1灯でも後ろ側のラム肉にも光が当たっている。お皿に落ちる硬い影がソースにかぶらないように、ライトの高さを調整した。
アクセサリーなしの Profoto B10 を半逆光の高い位置から直接照射。
夏の日にバーベキューレストランで楽しむラム肉の一皿を、艶やかにワイルドに描き出した。
ライティングD:面光源
メインライトとして、OCF ソフトボックス 60x90cm を取り付けた Profoto B10 を半逆光、低い位置から照射。フィルインライトとして、Profoto A10 を天井バウンスさせて、全体に光を回し、左側からレフ板で影を起こした。
最後に、高級フレンチレストランをテーマに、面光源を使ってラム肉をジューシーに描き出したライティングパターンDを紹介する。
メインライトとして、OCF ソフトボックス 60x90cm を取り付けた Profoto B10 を半逆光、低い位置から照射した。
ラム肉の表面にソフトボックスの面光源を写り込ませるために、低い位置にソフトボックスを置いた。ハイライトを面で大きく入れることで、ラム肉をしっとりジューシーに描き出した。
メインライトとして、OCF ソフトボックス 60x90cm を取り付けた Profoto B10 を半逆光、低い位置から照射。
ソフトボックスに加えてフィルインライトとして、Profoto A10 を天井バウンスさせて、全体に光を回してシャドーを起こして色を出した。さらに、左側のシャドーを和らげるためにレフ板で起こした。
最終写真が下のもの。
メインライトとして、OCF ソフトボックス 60x90cm を取り付けた Profoto B10 を半逆光、低い位置から照射。フィルインライトとして、Profoto A10 を天井バウンスさせて、全体に光を回し、左側からレフ板で影を起こした。
高級フレンチレストランのやわらかくてジューシーなラム肉の一皿を描き出した。
ライティングA〜Dの比較
ライティングパターンA〜Dの最終写真の比較が下になる。同じ被写体とカメラアングルで撮影しているため、ライティングによる描写の違いがわかりやすい。
ラム肉を、Aは回った光でふんわりパリッと、Bはスポット光でムーディーにカリッと、Cは夏の太陽光でツヤっと、Dは面光源でジューシーに描き出した。
ラム肉の表面のハイライトの入り方を拡大して見ると、光源の違いによる質感の違いがよく理解できる。
ハイライトは被写体の表面に光源が写り込んでできるもので、今回の場合は、ラム肉の表面の油脂に光源が写り込んでいる。
グリッド10度をつけた Profoto A10 をサイドから直射した B は、ラム肉の表面に小さな点状の光源が多数写り込んで、小さなハイライトが細かく入った結果、カリッと乾燥した質感で描き出された。
Profoto B10 の直射光をサイドバックから照射した C は、B に比べるとラム肉の表面に映り込む光源が大きいため、ハイライトが点ではなく面として入った結果、より艶感がある表面の描写となった。
ソフトボックスの面光源をサイドバックから照射した D は、C よりさらに大きな光源が表面に写り込んだため、ハイライトが面で重なり合って全面に入った結果、ジューシーな質感で描き出された。
バウンス光をサイドから照射した A は、B とほぼ同じ角度にメインライトを置いているのでハイライトの形が似ているが、光の芯の部分が外れた減光部も含めた光源全体がレフ板に当たって B より大きな光源になり、ハイライトの中の明暗のグラデーションの幅が広い面状のハイライトが入って、パリッとした質感で描き出された。
シチュエーションに応じて光源を使い分けることで、様々な質感の描写に挑戦してみて欲しい。