限られた撮影時間と場所で臨機応変に対応することが求められるレストラン出張撮影。手軽にハイクオリティな料理写真を撮影するためのライティングのコツをシリーズで解説する。
今回は、コース料理の撮影の模様をレポートする。
メインライトとフィルライト、アクセントライトの3灯で撮影。
コース料理の撮影では、物の配置が一番のポイントになる。複数のお皿をどこにどのように配置して、余白をどのように埋めて、全体のバランスをうまく取って最終形に落とし込むのか、非常に悩ましい撮影とも言える。
今回は前菜とメイン料理を手前に、スープとデザートは後方に置いて撮影した。メニューのお皿をただ漠然と並べて撮影した一枚が下のもの。全体のバランスが良くなく、余白が多く寂しい印象になっている。
ここではメイン料理のお皿が大きく目立ち過ぎるため、小さいお皿に移し替えることにした。さらに、余白を減らすために、ドレッシングやパン、オイル、塩などを追加した。
余白を埋めるためにソルト&ペッパーを置くのも一つの手だが、シェフによっては料理の味を変えることになるため嫌がる方もいる。オイルと塩はパンにつけて食べるものとして、シェフの説得もしやすい。
ライティングはメインライトとして、Profoto B10 をアンブレラ ホワイト M にバウンスさせて、さらにリフレクター トランスルーセント L で透過させた光を、半逆光の位置から照射した。
メインライト1灯で撮影したのが下の写真。全体に光が回りながらもやわらかい影が落ちて立体的に描き出された。
メインライト 1灯で撮影。
メインライトの影を和らげるために、天井バウンスした Profoto A10 をフィルライトとして加えた。
メインライトとフィルライトの2灯で撮影した写真が下のもの。よりふんわりとした印象に描き出された。
メインライトとフィルライトの2灯で撮影。
さらに、アクセントライトとして、Clic グリッド 10度を取り付けた Profoto A10 を、リフレクター トランスルーセント L 越しにラム肉に向かって照射した。
メインライトとフィルライト、アクセントライトの3灯、さらに左手側にレフ板を加えて影を起こして撮影した最終写真が下のもの。
アクセントライトを加えることで、若干重く沈んでいたラム肉の色を起こして、メイン料理により目線が行くようにした。
メインライトとフィルライト、アクセントライトの3灯で撮影。
レストラン出張撮影の成否の鍵は、レストランのシェフやオーナー、スタッフとのコミュニケーションにあるとも言える。
シェフは料理をお客様が食べる際に上から見て綺麗に見えるように盛り付けるが、撮影用には肉などを立たせて高さを出した方が絵になるなど、シェフとの攻防になりがちだ。シェフが撮影慣れしているか、料理をフォトグラファーが触っても問題ないか、気難しいタイプかなど、シェフの性格をあらかじめ把握しておくことも役立つ。また、コース料理の撮影は、料理単品の撮影に比べて全体のバランスを取ったり調整に時間がかかることをあらかじめ伝えておくことも良いかもしれない。
これまで前菜とスープ、メイン、デザート、ドリンクの単品撮影とコース料理撮影を紹介してきたが、単品撮影では B10 と A10 1灯ずつ、もしくは A10 2灯を使った。画角が広いコース料理では B10 1灯と A10 2灯の合計3灯を使用した。
これから出張撮影用のライティング機材の導入を考えている方には、まずは、メインライトとしてソフトボックスも使える Profoto B10 1灯とフィルライトとして Profoto A10 1灯の合計2灯から始めることをお勧めしたい。